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みんなでしんがり思索隊

書いてみよう、それは案外、いいことだ。 / 載せてみよう、みんなで書いた、幻想稿。
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学校という場所 / 著者:ドーナツ - ch10

幸いなことに、私の好きな場所はたくさんある。
地元の河川敷、昔住んでいた地域の遊歩道、今住んでいる市の商店街。
足しげく通っているカフェ、梅田の雑踏、外海の島々。
その中でも並々ならぬ愛着を抱いているのが学校である。

場所とは一体なんなのだろう。
外国語の「場所」に相当する語には「地位」という意味があったりする。
私の生きる場所、コミュニティー、私の立場。他者との交流の中で作られていく。

これまでの人生のほとんどの期間を「学校」という場所で過ごしてきた。
大学生となった今でも、行く場所は学校である。

小学校の記憶はあまりない。
途中で転校したことがあるのが原因かもしれないが、転校先の学校で方言に苦しんだことが鮮明に思い出される。

中学校と高校、そして大学。
この二つについて書いてみようと思う。

中学と高校は6年間同じ学校に通った。
中高一貫の女子校である。
校門をくぐると細い坂道が続き、その坂を上った丘の上にある小さな学校だ。
図書館の窓からは海へと注ぐ大きな川が見渡せた。

進学校だったので、生徒たちは皆よく勉強していた。
私も、図書館や教室、部室など、学校の至る所で勉強していた。
勉強の忙しくないときはずっとチェロを弾いていた。
音楽系の部活に所属していて、私はチェロを担当していた。

良くも悪くもアットホームな学校だった。
生徒同士の距離も、先生同士の距離も、先生と生徒の距離も近かった。
だから、なにか問題を抱えているときは必ず誰かに相談することが出来たし、頼れる人が学校の中にたくさんいた。
私はそんな「学校」が大好きだった。

不器用で、人間関係を築くのが下手で、それ故に勝手に傷ついてばかりいた私は、中学高校で人間関係を築く練習をさせてもらった。
きっと、たくさんの人を傷つけたと思う。
でも、誰かが温かく迎え入れてくれる、そんな学校だった。


高校生になったある日、ある大学のパンフレットを見て「あ、この大学、良い。」と思った。
その大学は、当時の私の成績だと相当がんばらないと手が届かない大学だった。

だが、当時からアホだった私は「この大学に行きたいです!」ととりあえず宣言した。
そこから、マイペースゆえに途切れ途切れの勉強の日々が始まることになった。

その後、一悶着ありつつも志望学部・学科を変え、無事にその大学に合格した。
紛れもなく、今、通っている大学だ。


この大学は、都会から少し離れた、郊外のおっとりした地域にある大学である。
学生も教員も、どこかおっとりしている。
特徴に欠ける大学と評されることが多い。

「中高一貫の女子校」という温室を出てこの大学に入ったら、案の定カルチャーショックに直面するはめになった。
まず、教室に男子がいるというところから、カルチャーショックなのだ。

つらいこともたくさん経験し、夜な夜な誰かに話を聞いてもらったこともあった。
大学生らしい遊びも少しは経験し、部活をやめたりもし、人並みに大学生としての経験を積んで、なんとかすれすれの成績で進級し、現在3年生である。

中学高校の時に比べ大人になったせいか、大学生活の2年と少しには本当に濃い思い出がたくさんある。
苦い思い出も良い思い出も。

温室育ちの私を成長させてくれたこの大学が大好きだと、ふと思う。
先生の研究室を尋ねたらよくわからないエジプト人がいたり、准教授と学生が授業後にLINEを交換していたり、キャンパスで踊り狂うダンスサークルの邪魔さに慣れてきたり、数学専攻の院生が「素数さん」と呼ばれていたり、学生が他大の教員を呼んで講演会を開いてしまったり、授業でラマダーン自虐ネタをかますムスリム教員がいたり、学生が当たり前のように教員の名前で居酒屋を予約したり、カフェを作ってしまう学生がいたり、勝手に大学でピザを焼いて売っている学生もいたり、みんなで准教授の研究室のドアにいたずらしたり……(※すべて実話です)
こんな生活ができる大学、とても素敵ではないだろうか。



スペースとしての場所の中にも、好きな場所はたくさんある。
でも、人がいて成り立っている「場所」の方に、より強い愛着を感じる。

いつか学校を離れ社会人になったら、お金で定義される関係に束縛されてしまうのだろうか。
とてもシンプルでわかりやすい関係だけれども、決して好きにはなれない。

学校という場所は、お金で定義されない関係が成り立つ場所だと思う。
私はこういう関係性を信じていたい。

もしこの文章をお読みになっている方で「不登校なう」という方がいらっしゃったら、ぜひ「学校の人」と連絡を取ってみてほしいと思う。
きっと、あなたを応援してくれる人が学校の中にいるはずだ。

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