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みんなでしんがり思索隊

書いてみよう、それは案外、いいことだ。 / 載せてみよう、みんなで書いた、幻想稿。
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chiasma 26:「悲劇と喜劇をわけるもの――太宰治という箱のなかで」

chiasma 26:「悲劇と喜劇をわけるもの――太宰治という箱のなかで」


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自分たちはその時、喜劇名詞、悲劇名詞の当てっこをはじめました。これは、自分の発明した遊戯で、名詞には、すべて男性名詞、女性名詞、中性名詞などの別があるけれども、それと同時に、喜劇名詞、悲劇名詞の区別があって然るべきだ、たとえば、汽船と汽車はいずれも悲劇名詞で、市電とバスは、いずれも喜劇名詞、なぜそうなのか、それのわからぬ者は芸術を談ずるに足らん、喜劇に一個でも悲劇名詞をさしはさんでいる劇作家は、既にそれだけで落第、悲劇の場合もまた然り、といったようなわけなのでした。
――太宰治『人間失格』より


 英語にも日本語にもないものとして、フランス語には「女性名詞、男性名詞」があり、それの単数複数まであります。たとえば、地平線を意味する「horizon」(おりぞん)は男性名詞で、"le horizon"(l'horizon)とか、"les horizons"みたいな活用をするし、家族を意味する「famille」(ふぁみーゆ)は女性名詞で、"la famille"とか、"les familles"みたいに異なる活用をするのです。

 最初は「なんて面倒なルールなんだろう」と思いましたが、翻訳を続けていくうちに「なんて豊かな言語なんだろう」と思い直すようになりました。名詞というものに寄り添っているのだということが、ようやく理解できたのです。日本語も数字を数えるときに、かなり寄り添いますね。

 太宰治の「喜劇名詞(コメ)――悲劇名詞(トラ)」は、名詞をすごく親密なものにしてくれます。汽船や汽車は悲劇名詞で、市電とバスは喜劇名詞。なるほど、田舎的か都市的か、苦しいか心地良いか、そういう基準で名詞を操っていく太宰治のあたまのなかに入ってみませんか。

(1)猫
(2)めまい
(3)パソコン
(4)フィギュア
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(6)パーカー
(7)心臓
(8)チョコレート
(9)自転車
(10)後輩
(11)先輩
(12)サラダ
(13)焼酎
(14)三角定規
(15)ライブ
(16)中学生
(17)花火
(18)研究
(19)坊主
(20)収穫祭

 上の20個から好きなだけ選択して、それが喜劇(コメ)なのか悲劇(トラ)なのか区別していき、その簡単な理由(めちゃくちゃ詳しくしても構いません)をお教えください。(a)

 それに加えて、ここに挙げていない名詞を自分で考え、それが喜劇なのか悲劇なのか、同じように語ってみてください。(b)

 (a)は、みんなの世界の見方の違いが浮かび上がってきて面白いかもしれませんし、(b)はそれぞれの発想力や興味などが露骨に出るので面白いでしょう。気負う必要はありません、ゲーム感覚で挑戦してもらえたら幸せです。それでは、レッツプレイ!
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