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みんなでしんがり思索隊

書いてみよう、それは案外、いいことだ。 / 載せてみよう、みんなで書いた、幻想稿。
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あみめでぃあ(企画の意図)

【あみめでぃあ——企画の意図】(それぞれの企画書に載っている企画の意図を抽出して読みやすくまとめました)


2014/11/24(創刊号)
 プラトンという哲学者が、かつて、概念(イデア)とは何だろうかということを考えた。概念とは、私たちが何かをイメージするときの根源的で共通性のある印象、つまり《ある何かに関して頭のなかだけに存在する元の形》と説明されるそれのことである。

 「幸福」のイデア、「美しさ」のイデア、「社会」のイデア、世の中にあるものは全てイデアの集まりなのだということを、プラトンは、発見した。

 しかし、喜びも束の間、それはそれは困ったことに、「イデアのイデア」(概念の概念)というのがあるのではないかと気付いてしまうのであった。それは、入れ子方式的に、「イデアのイデア」のイデア、さらに、「イデアのイデアのイデア」のイデアがあることをも示してしまう。無限に増えゆく「新しいイデア」のアポリアを決着すべく、プラトンは、考えに考え、「頭のなかだけで認識できるイデア」と、「そのイデアを模して現れる実体」と、「そのどちらも(あるいはそのすべてを)収容してしまう場所」(コーラ)があるのだと誤魔化すハメになった。これが紀元前5世紀ころの話だと言われている。

 それから時が経ち、1993年、ジャック=デリダという哲学者が、コーラという概念について考えた論文を上梓した。結果として、デリダは、「このコーラが《受け取ること》とは、どのようなことなのか、われわれはまだ考えていない」と敗北的な宣言をする。私たちはまだ、大昔にプラトンが考えていたことの前で、足踏みをしているのかもしれない。

 火薬が発明された後も「火薬の扱い方」が分からなくて四苦八苦したように、あるいは、原子爆弾が発明されてから何十年も経とうとするのに「核の扱い方」がいまだに分からない現代人のように、概念というものが発明されて以来ずっと、私たちは「概念の扱い方」に困ってきたのかもしれない。

 しかし、それでも、バラバラになっている概念という毛糸に、《学ぶことそれ自体》という編み針を通すことによって、私たちは、概念の扱い方を「ひとつひとつ」——つまり「こつこつ」——身に付けることができるのではないだろうか。イデアのイデアが何かなんてこと分からなくとも、「社会」という概念、「愛」という概念、そういったものを自分に向き直すことができれば、概念を実地的に扱うことができるのではないだろうか。

 たとえば「理系」の学問というのは、数や量といった概念の扱い方をみっちり学ぶ場所だといえるし、「文系」の学問であれば、人間のしてきたことや感じてきたこと、意識してきたことなどを概念にして扱えるよう学ぶのかもしれない。もちろん学問では扱いきれないところもあるだろうし、ひとりでやるのは難しいから、みんなで協力して、合力して、やってしまおうというのが、本文芸誌の狙いである。

 老若男女に無難にウケる辞書のファミリーレストランのような語釈には頼らず、私たちが、私たちの言葉で語る「概念」の結集。バラバラだった、その、ひとつひとつが、編み目を生み出していく体験(の入り口)を、ここで。

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2015/5/4(第二号)
 辞書にも百科事典にもできないこと——それは、概念を向けなおすことである。主観というのは、編み針になる——概念と概念を、「おいおいそんな風に編んで大丈夫なのか」と心配になるほど、独特に編み合わせて、そうして出来上がる編み模様、それが主観の面白さであり、主観の強みである。

 概念を主観によって説明すること、それは私たちに《語ること》を要請してくる。言い尽くして、言い尽くして、言い果てる。すべての毒素を吐き出すかのごとく、何か自分の人生の《おもり》となっていたものを、言葉と共に押し出していく。そういう作業のなかで、人は主観も客観もこえたひとつの「境地」を得る。

 それまでは主観や客観の「観点」という一点でしかなかった思考が、境地という「場所」に取ってかわる経験。概念を語ること、あるいはそうして出来上がった文章を読むこと、そこには、私たちを「点」といった狭い場所から「境地」という広い場所へと解放する力(熱性のエネルギー)があるだろう。そんなものを、作っていきたい。

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